資源はどんなに希少なものでも大なり小なり生産されますが、不動産は新たに生産されることはありません。
そのため、かつての高度経済成長期には、土地の価格は上昇し続けて下落することはないという土地神話がありました。
景気の波や、人口の増加に歯止めがかかっている現在は、需要と供給のバランスで、常に上がり続けるものではないことは経験しましたが、それでも多くの人にとって、不動産取引は年収の数年分にも相当し、人生の中でも取引する機会は限られています。
また、自動車や家電製品のような工業製品と違って、同じものが二つとないのも不動産の特徴です。
そのため、不動産の価値は、売りたい人が売りたい値段と、買いたい人が買いたい金額がマッチして初めて実際の価値を知ることができます。
購入するときは価格を知ることができますが、不動産売却では、価格を決めるのは売主です。
いくらで売るかを自由に決めるなら、少しでも高く売りたいのは誰もが持つ思いですが、その値段で買いたいという買い手が現れなければ取引は成立しません。
そこで、一般的には、買い替えで次の物件が決まっている場合や、借入金の返済をする必要があるなど、売却代金の用途や必要な時期が決まっている場合は、価格を抑えて成約を優先し、反対に、いつでもいいなら、希望価額で買い手をゆっくりと待つことになります。
日常生活では、1万円あれば豪華な食事が食べれても、数千万円の不動産取引では、10万円やときには100万円単位の値引き交渉をすることも稀ではありません。
値引交渉を受け入れるかどうか判断する場合、売却代金がいつまでに必要かのほかに、戸建てでもマンションでも共通してかかる維持費は固定資産税ですが、マンションの場合は、管理費や修繕積立金が毎月かかっているので、売却によって支出を抑える効果まで見込んでおくと効果的です。
不動産売却では、不動産会社に買い手を募集してもらいますが、その際、専任媒介と一般媒介を選択します。
専任媒介は募集を1社に任せること、一般媒介は複数の会社に委託して、成約に至った会社にだけ仲介手数料を支払う方法で、いずれの場合も、成約した会社にだけ仲介料を払うので、どちらが費用を節約できるという差はありません。
専任媒介は、委託した不動産会社が必ず成約できるので、募集広告に経費をかけたり、営業スタッフを重点的に配置してくれることが期待できますが、その反面、他社との競争がないのでスピード感に不安が残ります。
一方、一般媒介では、他社で成約すると募集広告にかけた経費や営業スタッフのコストが回収できなくなるので、販売活動に重点を置いてもらえない可能性もある反面、他社と競争があるから、スピーディな販売活動をしてくれる可能性もあり、どちらの方法が有利と一概に決めることはできません。
出典:専任媒介と一般媒介の違い
一長一短があるので、不動産会社の担当スタッフとの信頼関係を基に選択すると有効です。
不動産売却では、売買代金を受け取ると同時に仲介手数料を支払うほか、借入金の担保になったままでは所有権を移転できないので、抵当権がある場合は残債を清算する必要があります。
また、所有権移転登記の手数料は購入者が払うので、売り手が心配する必要はありませんが、移転の準備として抵当権の抹消登記費用は売り手が負担します。
売買にあたって、仲介手数料やローン残債の清算は売却代金の決済と同時に行いますが、注意しておきたいのが税金です。
不動産売却の税金は、1月1日から12月31日までの分を翌年3月15日までの確定申告で申告、納税します。
確定申告で所得税(国に納める税金)を納税すると、6月に住所地から住民税の課税を受けます。
売却代金を受け取ってから納税までのタイムラグがあるので、手元にいくら残しておく必要があるか、納税資金のシミュレーションをしておくと安心です。
最終更新日 2025年7月8日 by donkor