洋上風力発電とは、海などの洋上に風車を設置し、風の力で回転させることで電気を生み出そうとするものです。
言うまでもなく風力発電の一種であり、それを陸上ではなく洋上で行おうとするものになります。
こうなると、最初の疑問はなぜ陸上ではなく洋上で行うのか、何かメリットがあるのかということになりますが、この点から説明していくことにします。
風は一般的に陸上よりも海上のほうが強く吹いている
非常に重要なこととして、風は一般的に陸上よりも海上のほうが強く吹いているという事実があります。
理由は単純で、陸上には少なくともある程度は地形の起伏があり、それによって風の力が弱められるからです。
一面の草原や砂漠などであれば地形の起伏も少ないかもしれませんが、山や丘などがあればそれで遮られます。
とくに日本は世界的に見ると陸地に占める草原や砂漠などの割合が低く、山や森林地帯が多くを占めていますからこの点は無視できません。
洋上であればそのように風を遮るものが全くなく、従って強い風が吹き続けるというメリットがあります。
土地や景観の問題
土地や景観の問題もあるかもしれません。
他の発電所でもそうですが、陸上に設置するとなると土地の問題は避けて通れません。
できるだけ地価の安い場所が適切なわけですが、そういう場所は電気の大消費地から離れていたりして送電のロスがあったりします。
かといって市街地に近い場所では地価も高いことが普通ですし、人口密集地に近ければ景観を問題にする人も出てきたりすることがあります。
もちろん、洋上であればこの問題は全て綺麗に解決するかと言えば、思ったほどではないかもしれません。
海の上であれば誰でも自由に風車などを設置して良いかというと、そんなはずはないというか、そんなことがあってはむしろ困るというのは誰が想像しても分かります。
特に我が国では海上や洋上の利用について明確な法律がなく、この点で問題が多いことは事実ですが、少なくとも誰か個人や企業の所有物ではないことから、その気になれば国主導で物事を進めやすく、実際に世界を見渡すとそのようにしている国もあります。
景観についても、陸上に設置するよりは問題になることが少ないのは間違いありません。
洋上風力発電の問題点
一方で、洋上風力発電を陸上でのものと比較するとデメリットというか、解決しなければならない点があることもまた事実です。
子供でも分かることですが、地面に風車を立てることと、水の上に風車を立てることを比較すると後者のほうが難しいことは否定できません。
風車は、何らかの形で支柱を固定しなければなりませんが、地面であればそこに固定できるものの、水面ではそうはいかないからです。
ただ、この点では、実際には陸地にほど近い場所に設置されることが普通ですので、そこまで極端な深さにはなりません。
海面上に浮きのような構造物を建設する方法は海の深さを問いませんが、浮きとは言っても本当に海流などでどこかに流れていっては話になりませんから、ロープか何かでは係留する必要があるでしょうし、海が荒れたような際にも転覆したりせず安全である必要もあります。
陸上とは異なって常に塩水にさらされる
洋上ということで、陸上とは異なって常に塩水にさらされるという点も、建造物としてはマイナス点です。
コンクリートであれ鉄骨その他の材料であれ、陸上とは異なって常に水分、それも塩分を含む水にさらされているのは劣化の大きな原因になるため、このことを考慮する必要もあります。
付随点として、風力発電所そのものだけではなく、送電網に接続するところまでの電線についても同じことが言えます。
陸上であっても近隣の送電網まで一定の距離がある辺鄙な場所はいくらでもあるかもしれませんが、洋上の場合はそこに送電網が既に存在することは100%ありません。
新たに電線を敷設しなければなりませんが、それについても上と似たような条件をクリアする必要があるわけです。
土地の問題は仮にクリアできたとしても、漁業との兼ね合いは問題になる可能性があります。
大規模な洋上風力発電所があると、回転する風車はそれなりに危険でもありますから、漁船の立ち入りは禁止になるかもしれません。
今までそこで漁をしていた人から見ると、突然それが禁止になるのは納得できないというか、何らかの補償があるべきだという話にもなるでしょう。
まとめ
このように、洋上風力発電は決して完璧に理想的な発電方法ではありません。
しかし化石燃料を利用しないエコな発電方法であることも事実であり、太陽光発電や水力発電などとともにそのような発電方法のラインナップを増やす大きな意義を持っているのです。
最終更新日 2025年7月8日 by donkor